おまけ(20日、ネットの問題とナチスの基本イデオロギーについて追加の上独立)(24日この日に引越し)

 問題のドイツでは、SPDを飛び出した左翼反対派と旧東ドイツ政権党(社会主義統一党)の後継政党であるPDS(民社党)が新党を作るそうです、PDSの元党首のグレゴール・ギジはミュラーの弁護士で友人でした。FDPや緑の党よりはるかに支持があるし、ベルリン市の政府を獲得することは可能ではないでしょうか。ドイツの歴史ではSPDが分裂する時は必ず戦争(ファシズム)と絡んでいるので要注意です(初めはローザ・ルクセンブルグやリープクネヒトが第一次大戦に反対して、2度目はワイマール末期に「独立社会民主党」(後の連保共和国首相首相ブラントなど)が設立)。その程度のなまぐさい背景はあるわけです。

http://www.worldtimes.co.jp/w/eu/eu2/kr050712.html 世界日報必死だなw、といったところです。ただグレゴール・ギジはユダヤです、CDU議員の反ユダヤ発言に同調してドイツ連邦共和国国防軍特殊部隊の現役のキンケルギュンツェル将軍ユダヤ共産主義を生み出した犯罪民族だとのたまわって追放されたのは今世紀のことです*1*2*320日リンク他追記訂正)。

 追記(20日)

 私はテレビで見た記憶で書いたので、CDUの議員の発言がユダヤ人を(ロシア革命の担い手として)犯罪民族と呼んだのであり、将軍はそれに賛意を示したという基本がきちんと書けませんでした、どうもすいません。
 ただこの過程で気になったのは、ネット上にベリタを例外としてオリジナルの記事としてこの事件についての記事(個人ブログと転載ばかり、リンク先の方々ありがとうございます)が残っていないことです。ネットの危うさというのを感じました。

 もう一つ、もっと問題なのはネット上でナチスマジックワードが、「ユダヤ・ボルシェヴィズム」(ボルシェヴィズムはユダヤ的な体制であり、文明の脅威であるという思想を示すフレーズ)だったという基本中の基本が(匿名掲示板などはきちんとチェックしていませんが)触れられていないことです。この二つの「敵」の結合を思想の基本に取り込んだことがナチスの成功を助けました。国防軍、ユンカー、経済界、教会、中間層、労働者、失業者などの多様な勢力をまとめ、さらに戦時体制を作り、大戦を遂行してホロコーストにいたるまでこの言葉がマジックワードとして連呼されました。この言葉は、反ユダヤ主義植民地主義的人種主義だけでなく伝統的な東欧人差別意識反共主義、などに訴えてナチス体制に支持を結集させる作用を果たし、ナチスの行った東部戦線での「絶滅戦争」を支えました。この言葉は東欧やソ連に住む人々を劣等人種(ウンターメンシェ)とするために使われ、ソ連を文明の脅威として規定し、ドイツのソ連侵攻はこのようなイデオロギーを基盤にして行われました。ホロコーストはこの「絶滅戦争」抜きでは存在しえませんでした。

 ですから、彼らの発言はナチスの基本思想そのものが生き残っていることを示しています。ユダヤ人(イスラエル)に対する問題だけを強調する(パレスチナからアプローチする人を含めて)方々はそこを失念している、現在でいえば単なる排外主義や(イスラムであれ、中国韓国であれ)差別主義だけでは、ファシズムは成立しないということです。ですからあえて書きます。ちなみに私の立場は「ファシズムを批判して、資本主義を批判しない人は、牛を殺すのはいやなのにステーキは食べたいという人と同じだ」(ブレヒト)です。なお、私はファシズムという言葉はかなり厳密に定義して使っています。「全体主義」という(歴史学ではあまり使われない)言葉は使いません。詳しくは19日の書き込みやエントリーを参照ください。


http://www.cgs.c.u-tokyo.ac.jp/symposia/s_2004_03_27.html

http://www.cgs.c.u-tokyo.ac.jp/symposia/s_2004_09_05.html
 どちらもジェノサイド研究シンポジウムの記録です。参考にお願いします。ちなみに、石田勇治さんが今年NHKのBSでドイツの歴史教育についての小特集にでました。最初に東独(DDR)での教育が悪かったという趣旨のVTRが流れたけれど、その後は一切、誰もそのようなことは語らなかったので、16年も経ってもまだネオナチや否定主義を東独の教育のせいにするのは辞めて欲しいと思っていたのでちょっと感心しました。(同じウェブの中ですが間違えてリンクしていたので少し変えました、トップはここです。)*4