今年の5本(追記31日・テレビ放映、1日・音楽と他の事)

 そういうわけで、ベスト企画という安直な事をやる事にしたのですが、本とマンガと映画と音楽では、どうもできそうもないのですね。要するに数が圧倒的に足らない上にすでに紹介してしまっている(驚くほどないのでよく考えて見ると単に記憶から抜けているだけだったりもする、ますますやばい)、とりあえずまあ本業(?)ということで舞台だけ5本やります、これも記憶からとんでるのが多いのですけどね。後、見ているものがひどく偏っているけれどもうそれはしょうもない。

 というわけで見た順に。なおクアトロガトスは抜いています。

 解体社・「制御系」(フリースペース・カンバス)

  これはとりわけ2「私的な人体」の完成度の高さから、3「不死のウィルス」への変化が凄かったわけです、上演によって何ができるのか(何をしてしまう)というレベルで転換がなされていてその結果の上演空間の質の変化は現在のメディアや我々の置かれている社会構成の変化が織り込まれているという意味でも注目に値します。ちなみに解体社は今年はじめて見ました。

 フォルクスビューネ・「終着駅アメリカ」(世田谷パブリックシアター

  これについては「シアターアーツ2005夏号」の鹿島則一の文章を読んでくださいw。とりあえず、グローバル化(≒アメリカ化≒マックワールド化)と歴史性の軋轢なき軋轢をドイツ、ポーランドアメリカの三つのレベルを同時に扱いながら上演として提示したことは見事、とにかく高品質だし、演劇というものがどのような歴史的社会的条件で作られるか(ならば日本ではどうするべきか?)考える材料としてもとてもいい。充実したネットの情報*1はとても役に立ちます。


 ベルリナー・アンサンブル・「アルトゥロ・ウイの興隆」(新国立劇場)

  このブログで散々書いたのであまりつけ加える事はしません。しかし、この作品がファシズムを扱ったものであり、今年これが日本にきたことの重要さは確認しておきます。上演されている事と観客の現実ががこれほどまでに近いということはないのです。それがほとんど指摘されなかった事も含めて。


 チェルフィッチュ・「目的地」(駒場アゴラ劇場)

 最後に、一番ポピュラーなものをw。去年、「労苦の終わり」を見て演出うまさと上演空間の異様さに驚いたのですが(後半はよくなかったけれど)、今度はどうだろうと思っていたら、構成の見事さに感心しました。前回と違って、極めて平坦な上演の中にどのように異質なものを導入するか(それはテーマ性ということでもあるのですが)もきちんと考えられていました、字幕も見事に構造的にはまるように使われていました。ただ台詞と身体にずれを導入しようという試みはどうだったのでしょう、ある意味で作品としてよくできすぎている(自己完結性がこの劇団の本質ではあるけれど)のがこの上演の欠点だとすら言えるので、そのような試みが必要なのは確かですが…。そうなるとこれまで書いた海外劇団との違いが重要になるのですが、極めて人工的な「超リアル」が確かに(異様であるとともに)「自然」であるということです、それは上演がつねにどこか特定の時間と場所で行われてしまうという事とかかわると思うのです。追記31日・「目的地」はテレビ放映*2されるそうです、1月15日NHK教育です、ちなみに私は「アルトゥロ・ウイ」の上演で近くにいた芸術劇場の司会のアナウンサーからサインをもらいましたw、一応芸能人(の隣にいる人)なのでつい、私の芸能人の定義は一応テレビに出ていることです。

 とここで最後の一つが思い浮かばない、というわけで以下思いついたものを次点として。

  PortB・「ホラティ人」(シアターΧ)*3

   「アルトゥロ・ウイ」の演出のハイナー・ミュラーの転換期の戯曲を上演。1968年に東ドイツで、プラハとパリに(それは同時に人間であることとないことの二重性に)引き裂かれたテクストを舞台上に再現したことは特記すべきだと。アガンベンが補助線になっていることは「制御系」と共通しています。

  モレキュラーシアター・「NOHOW ON」(国際交流基金センター)

 昨年の上演が「わかりやすかった」のにたいし、今回はよくわからない、しかし面白かったのは確かなので。これはおそらくは前回は「タネ」があったのに今回はなかったことによるのでしょう。しかし、「タネのなさ」を示す事の意味をどう考えるべきかが問題なのですが…。

 「番外」 DA・M・『SとCの隙間とカケラ』・プロトシアター

 ある意味で今一番気になっている上演です。

  

 えー、なんちゅうか偏ってますねー、しかもミーハーですね。なんせただいま2年生ですので申し訳ありません。なお、ルコラン*4を次点に入れようかと思いましたがちょっと辞めました。なおなにか思い出したら次点は増えます。

 とりあえず、今年読んだといえるマンガを一冊。

 絶版だしやはり短編作家なので長編はどうでしょうと思うけれど、面白かったです。きちんとした感想はいつか、彼女の歴史物を読んでると(まあこれはややちがうけど)武田泰淳の「海肌の匂い」を思い出すんですね(似たような感じのものは無論他にも…)現実に対する無力感のなんともいえない平穏さの共存というところで。

 最後に、やはり今年は、これは出しとくべき、本当のことは最後にゲロっておくべきでしょう。

嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)

嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)

 (追記・1月1日・2日)

 去年見た映画としては、井土紀州の「百年の絶唱」はとても面白かったテーマが私好みというのもあるけれど、映画としての出来も良かった、映画館で見た映画の本数があまりに少ないので、映画に触れるのは辞めようと思ったのですが、思い出したので音楽として追加します、映画自体もとてもいいできなのですが、後半の回想シーンのファンカデリックの「マゴットブレイン」があまりに強烈だったのでそれを去年の一曲として加えます。なお、井土氏と関係してこのような事件*5を見つけたのでリンクしときます*6。これは、私の行っている某あかねと批評誌クアトロガトスの鹿島則一名義の原稿とも関係するので。さらに追記・この記事は半分以上「asahi.com早大でビラまき逮捕 建造物侵入容疑で」
*7についての記事なんですが、皆ブクマから来ているので見てる人が確認できる範囲で一人しかいない、わざわざ(くさいけど)このレコードジャケットも出したのに!まあ、教訓としては宣伝は直接にですね。

マゴット・ブレイン

マゴット・ブレイン

マゴット・ブレイン